【高難度工事のプロ集団】宮地エンジニアリンググループ(3431)について銘柄分析!

銘柄分析

今個人的に注目している銘柄をピックアップして紹介していきます。今回は東京スカイツリーや明石海峡大橋などの建設工事に携わっている企業、宮地エンジニアリンググループ株式会社について特集します。

宮地エンジニアリングの企業としての特色や、どんな技術を持っているのか解説していきます。また、投資家目線で現在の株価水準や業績について分析した結果についてもあわせて共有します。ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。

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宮地エンジニアリンググループとは?

大黒ふ頭から撮影した横浜ベイブリッジ

まずは、宮地エンジニアリングとはどんな企業なのか紹介していきます。以下に、宮地エンジニアリング株式会社の企業概要をまとめて示します。

企業概要
会社名宮地エンジニアリンググループ株式会社
MIYAJI ENGINEERING GROUP CO., LTD.
証券コード3431
業種金属製品
株式市場東証プライム市場
本社所在地東京都中央区日本橋富沢町9番19号
設立年1949年3月
資本金15億円
従業員数492名
事業内容▼ 橋梁・鉄骨その他鋼構造物の設計、製作、架設、据付、維持補修
▼ 強化コンクリート工事の設計、製作、並びに土木工事の施工・工事管理
▼鉄塔・大空間構造物組立

宮地エンジニアリンググループの事業内容

宮地エンジニアリンググループはどんなビジネスを行っているのか紹介していきます。宮地エンジニアリンググループは、橋の建設技術を持つ以下の企業2つが合併してできた企業です。

  • 宮地エンジニアリング株式会社
  • エム・エム・ブリッジ株式会社

宮地エンジニアリンググループが行っている事業を大きく分けると以下の2つです。

宮地エンジニアリンググループの事業
  • 橋・鉄塔・ドームなどの大型構造物を新しく建設する事業
  • すでにある橋などの大型建造物のメンテナンス事業

橋・鉄塔・ドームなどの大型建造物を新しく建設する事業

宮地エンジニアリンググループの主力事業が、橋や鉄塔などを新しく建設する事業です。宮地エンジニアリンググループは、特に橋の建設工事で高い実績を持っており、高難度の工事を得意としています。

高難度の工事とは、大型の建設機械を入れることが難しい山間部での建設工事や、鉄道の運行に支障が出ないよう、短期間しか建設工事を行えない線路上の橋の建設工事などが挙げられます。こういった高難度の工事において、独自の工法や高いスキルを持った技術者集団を武器に対応しています。

すでにある橋などの大型建造物のメンテナンス事業

宮地エンジニアリンググループでは、建設してから時間がたち老朽化した建造物のリニューアルやメンテナンスも行っています。日本国内の高速道路は、1960年代の高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化が問題になってきています。これらを、現在の建築基準に合わせて地震に耐えられるよう免震構造にしたり、定期的に補修工事を行って強度を維持すメンテナンスを行っています。

宮地エンジニアリンググループの強みとは?

隅田川にかかる橋とその後ろに映るスカイツリー

宮地エンジニアリンググループが他の建設会社と差別化を図っている点として、以下の3つが挙げられます。

宮地エンジニアリンググループの強み
  • 大規模な橋・タワーの建設工事における長年の実績
  • 高難度工事に対応できる豊富な建設機材と職人集団の確保
  • FRPを用いた軽量かつ長く使える橋の建設を実現

大規模な橋・タワーの建設工事における長年の実績

宮地エンジニアリンググループの1つ目の強みとして、大規模な橋などの建造物の建設に携わってきた長年の実績があります。この実績こそが、主要顧客である国土交通省高速道路公団から安定的に受注を獲得するうえでのキーになっていると考えます。

例えば、本州と四国を結ぶ明石海峡大橋や東京湾にかかる東京ゲートブリッジなど、有名な橋の建造において宮地エンジニアリンググループの技術は多大な貢献をしてきました。また、東京スカイツリーや東京タワーといったランドマークとなる塔や、阪神高速道路などの高速道路のリニューアル工事にも携わってきた実績があります。

この技術が評価され、優れた橋の建設技術に送られる「田中賞」を数多く受賞しており、高い技術力に裏付けられた実績があることをうかがわせます。

高難度工事に対応できる豊富な建設機材と職人集団の確保

山間部の高速道路の跨線橋の建設現場

宮地エンジニアリンググループの2つ目の強みとして、高難度の工事にも対応できる建設資材と高いスキルを持った職人を数多く確保していることが挙げられます。

高速道路や鉄道の上を通る橋は、交通に支障が出ないよう短期間で新設・リニューアル工事を実施しなければならず、対応できる企業が非常に限られています。そんな中、宮地エンジニアリンググループは、国内の各拠点に橋を架けるために必要な手延べ機(組み上げた橋を沿岸から送り出す建設機械)などの建設機械を数多く保有しており、迅速に対応できる体制が整っています。

また、高難度の工事を成功させるためには、実際に建設作業にかかわる人材のスキルも求められるため、数々の難工事をこなしてきた職人集団との連携関係を築いていることも、宮地エンジニアリンググループならではの強みとして生きています。

FRPを用いた軽量かつ長く使える橋の建設を実現

川にかかる橋を下から見た写真

宮地エンジニアリンググループの3つ目の強みとして、FRPと呼ばれる材料を用いた軽量かつ長寿命の橋の建設を実現していることも挙げられます。FRPは、Fiber Reinforced Plasticの略であり、ガラス繊維で強化したプラスチック素材のことを指し、以下の特徴を持っています。

  • 海の近くでもさびない
  • 軽いため人力で運べて、工期が短く済む
  • 大型車両が通っても問題ない耐久性の高さ

FRPのこの特徴を生かし、橋のさびを防止するための防護板や、歩道が狭い橋を拡張する際の支持部材として使うことで、工期の短縮や橋の長寿命化の実現につなげています。こういった材料を建設部材として使えるようにし、新たな価値を生み出す取り組みを行っているところも宮地エンジニアリンググループならではです。

投資先としてみた宮地エンジニアリンググループ

株価チャートに虫眼鏡を当てている。その周辺に手帳・キーボード・ボールペンが置いてある

続いて、宮地エンジニアリンググループを投資先の企業として検討した時に、どの程度投資する価値がありそうか分析した結果について共有していきます。

業績の推移について

直近5年間の宮地エンジニアリンググループの業績の推移を以下のグラフに示します。工事の受注状況によって年ごとの業績のブレがあるものの、営業利益率は10%付近を推移しており、建設関連としては数少ない高利益率の企業とみています。ROEも10%あたりで推移しており、まずまず良い水準と言ってよいでしょう。

宮地エンジニアリンググループの2020年から2024年までの売上高・営業利益率・ROEの推移を示したグラフ
出典:宮地エンジニアリンググループ 2020年3月期~2024年3月期決算短信より筆者作成

株価動向について

続いて、宮地エンジニアリンググループの株価がこれまでどういった動きをしてきたのか、直近5年間の宮地エンジニアリンググループの株価の月足チャートを以下に示します。2021年から順調に株価が上昇し始め、2023年に入ってからは明確長期上昇トレンドに入っており、現在も継続中です。

直近では、2024年7月に年初来高値を付けてからは短期的な下落基調にあり、どの時点で株価が反発して上昇トレンドを維持できるのか注目しています。

宮地エンジニアリンググループの2019年から2024年までの株価の月足チャート
出典:Trading View 宮地エンジニアリンググループ(3431) 株価チャート
※赤ライン:12カ月移動平均線 青ライン:24カ月移動平均線 緑ライン:60カ月移動平均線

株価の水準感・株主還元について

宮地エンジニアリンググループの株価水準や業績、株主還元について分析した結果を以下の表にまとめて示します。

ファンダメンタルズ 分析指標
PER11.6倍
PBR1.32倍
2024年3月期 ROE11.6%
2024年3月期 ROA6.4%
2024年3月期 売上69,365百万円
2024年3月期 営業利益率11.4%
配当利回り5.1%
2024年3月期 配当性向60.0%
直近10年間の配当実績増配5 据置5
出典:宮地エンジニアリンググループ株式会社 2024年度3月期決算短信 PER/PBR/ROEは2024年11月8日終値もとに計算

宮地エンジニアリンググループの株価水準については、PER:12.2倍、PBR:1.39倍とどちらも平均より低く割安な水準にあると考えます。業績についていえば、ROE:11.6%とまずまずの水準ながらも、営業利益率:11.4%稼ぐ力のある企業だと捉えています。

株主還元についていえば、配当利回りが5.1%と非常に高い水準にあり、株主還元に積極的な企業であることをうかがわせます。配当性向が60%と少し高い水準ではありますが、これは会社設立20周年の記念配当を行った影響が出ているとみています。

宮地エンジニアリンググループの将来性は?

夜の東大阪ジャンクションを上空から写した写真

宮地エンジニアリンググループが今後業績を伸ばしていけるか考えたときに、業績の追い風となる要因と、業績のリスク要因についてそれぞれ1つずつ紹介します。

阪神高速道路の更新工事などのビックプロジェクトの受注獲得期待

宮地エンジニアリンググループの業績を押し上げる要因として考えられるのが、大阪湾沿岸を走る阪神高速道路の大規模リニューアル工事が挙げられます。阪神高速道路は、1964年に営業が開始されてから60年以上が経過しており、老朽化が懸念されています。それに伴い、阪神高速道路は大規模なリニューアル工事を進めています。

阪神高速道路は、大阪湾沿岸を通っているため橋や沿岸構造物が数多くあるうえ、高難度の工事が求められます。つまり、宮地エンジニアリンググループが得意とする工事が多く、今後数年間にわたって継続的な受注増が期待されます。

その他にも、首都圏の駅の再開発事業など宮地エンジニアリングが活躍できる高難度の案件は増加していく傾向にあると考えます。

円安による物価高を背景とした工事発注量の減少

一方で、宮地エンジニアリングの業績を下振れさせるリスクとして挙げられるのが、円安を背景とした建設工事受注量の減少です。直近で発表された決算内容(宮地エンジニアリンググループ 2025年3月期中間決算短信)によると、会社予想よりも国土交通省からの発注実績が著しく減少しているという記載がありました。

これは、円安による物価高の影響などによって、新しく橋や道路を建設しようとする動きが弱まり、建設工事の発注量を減らしていることが考えられます。国土交通省は宮地エンジニアリンググループの主要顧客であるため、このような想定外の発注量の減少があれば、業績には大きなマイナス要因として響いてくるでしょう。

まとめ:実績を武器に大規模工事の受注を獲得できるか注目

明石海峡大橋の写真

今回は、大規模な橋や鉄塔・ドームなどの建設に携わっている企業宮地エンジニアリンググループについて特集しました。宮地エンジニアリンググループは、明石海峡大橋などの橋や、東京スカイツリーなどの有名な建築物の建設にかかわっており、難易度の高い工事案件に強みを持っている企業です。

その強みを支えるのが、長年にわたり積み上げてきた大型橋梁の建設ノウハウや、豊富な建設機材の確保、高いスキルを持った職人集団との連携体制です。さらに、軽量かつ高強度のFRP材料を使った橋の建設にも取り組んでいます。

投資家の目線から見れば、営業利益率10%付近の高い水準を保ちつつ売上高を順調に伸ばしており、稼ぐ力のある企業ととらえています。また、株主還元についても積極的な姿勢を見せており、配当利回りは5.1%と魅力的な水準にあります。

今後は、阪神高速道路の大規模なリニューアル工事や首都圏の再開発プロジェクトに伴う高難度案件の受注の獲得によって業績が拡大していく期待が持てるのではないかと考えています。