【近赤外線を駆使した画像検査に強み】アバールデータ(6918)について銘柄分析!

銘柄分析

個人的に注目している銘柄を1社ピックアップして紹介していきます。今回は半導体から食品まで幅広い分野の検査工程で使われる近赤外線カメラシステムを提供している企業、株式会社アバールデータについて特集します。

この企業のビジネスモデルの特徴や、持っている強みについて解説していきます。また投資先としてみたときの業績状況や現在の株価水準などについて分析した結果をあわせて共有したいと思います。興味があれば参考にしてみてください。

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アバールデータについてザックリ企業評価

  • 収益性
    5
  • 経営効率
    5
  • 成長力
    5
  • 割安度
    4
  • 株主還元
    3
アバールデータの優位性
  • 組込みシステム開発で培った高速通信技術
  • 近赤外線カメラを駆使した画像処理製品の豊富なラインアップ
  • 半導体製造装置メーカをはじめとした大手企業を得意先に持つ
  • 株価は割安水準だが、長期トレンドは横ばい
  • 営業利益率・ROEともに15%越えの高収益企業に成長
  • 顧客依存の受託開発品から自社開発品に売り上げの軸足を移せるか期待したい

アバールデータはどんな企業?

まずは、アバールデータとはどんな企業なのかについて簡単に紹介していきます。アバールデータの企業基本情報を以下の表に示します。

企業概要
会社名アバールデータ株式会社
Avaldata Corporation.
証券コード6918
業種電気機器
上場している市場東証スタンダード市場
本社所在地東京都町田市旭町1丁目25番10号
設立年1959年8月
資本金23億5,409万円
従業員数連結1,216名(2024年3月31日現在)
事業内容▼一般通信機器の製造販売
▼工業用計測器並びに工業用制御装置の製造販売
▼物理、化学、医学用等の電子装置の製造販売
▼その他の各種電子応用装置の製造販売

アバールデータは、通信機器の製造販売を祖業とする電気機器メーカです。1959年に東洋通信工業として設立され、プログラマやポータブルコンピューターの開発製造を行っていました。そこから産業用の組込みシステムの開発を通じて高速通信技術を強みに成長してきました。近年では、近赤外線カメラを使った画像処理分野にも力を入れています。

画像製品

アバールデータでは、近赤外線カメラを駆使した画像処理製品に力を入れています。近赤外線カメラを使うと、人間の目では見えない違いも、材料の物性の違いから判別することなどができます。

例えば、小麦粉・砂糖・塩を混ぜると左側の写真のように人間の目では見分けがつきませんが、右側の近赤外線カメラで撮影した写真では色で違いが判別できます。

出典:食品分野|ハイパースペクトルカメラ撮影事例 株式会社ケイエルブイ 赤:小麦粉 緑:塩 青:砂糖を表している

この特徴を生かし、食品製造工程や半導体製造工程での異物検査・非破壊検査などに役立てられています。

高速通信製品

アバールデータでは、光ファイバーを使って高速で通信できるハードウア製品にも強みを持っています。昨今ChatGPTをはじめとした生成AIブームで、データセンターは続々と増えています。このデータセンターに設置されているサーバー間での通信を高速化するのに、アバールデータの製品が貢献しています。

アバールデータの強みとは?

アバールデータの他の企業に対する優位性がどんなところにあるのか代表的な強みを3つ挙げると以下の通りです。

アバールデータの優位性
  • 組込みシステム開発で培った高速通信技術
  • 近赤外線カメラを駆使した画像処理製品の豊富なラインアップ
  • 半導体製造装置メーカをはじめとした大手企業を得意先に持つ

組込みシステム開発で培った高速通信技術

世界地図の国々が光のリンクで繋がれている

アバールデータの1つ目の強みとして、組込みシステム開発で培ってきた高速通信技術が挙げられます。データセンターにおける高速データ通信技術の需要は伸び続けており、その需要に応えられる製品を持っていることが大きな強みです。

また、この強みは画像処理製品にも生かされています。画像処理の時間を短縮して検査にかかる時間を短くしたり、遠隔で複数台の近赤外線カメラの映像をリアルタイムで処理できる技術力を持っています。これはアバールデータならでは優位性といってよいでしょう。

近赤外線カメラを駆使した画像処理製品の豊富なラインアップ

赤外線カメラを通して撮影した人間の映像

アバールデータの2つ目の強みとして、近赤外線カメラを駆使した画像処理製品の豊富なラインナップが挙げられます。アバールデータでは自社開発製品として、近赤外線カメラを使った画像処理製品をそろえています。

近赤外線カメラで撮影した映像はそのままでは使えず、専用の画像処理パソコンで処理する必要があります。この分野でもアバールデータは強みを持っており、カメラだけでなく撮影した画像を処理するための専用のパソコンや処理用のAIソフトまでまとめてソリューションとして提供できるところに強みを持っています。

半導体製造装置メーカをはじめとした大手企業を得意先に持つ

緑色の基板上に並ぶ半導体チップや電子部品

アバールデータの3つ目の強みとして、多くの半導体製造装置メーカーや検査装置メーカーを顧客に持っていることが挙げられます。半導体のテスターで高いシェアを持っているアドバンテストやEUVマスクブランクス検査装置の唯一のメーカであるレーザーテックを得意先に持っています。

さらには、医療用画像診断機器を手掛ける島津製作所や、日立製作所三菱電機といった総合電機メーカまで顧客に持っています。こういった大手企業とのつながりの多さは、信頼を得られるだけのアバールデータの技術力の高さを裏付けているといえるでしょう。

投資先としてみたアバールデータ

ここからは、投資先としてアバールデータという企業を見たときにどうなのか、分析した結果を共有していきます。

アバールデータの業績推移

アバールデータの直近5年間の業績の推移を以下のグラフに示します。直近の2024年は減少に転じましたが、売上高を着実に伸ばしています。営業利益率15%以上の非常に高い水準を維持しており、稼ぐ力の高さが表れています。また、2023年からは一気に経営効率が上がり、ROE20%以上をたたき出していることも注目に値します。

アバールデータの2020年から2024年までの売上高・営業利益率・ROEの推移を表したグラフ
出典:株式会社アバールデータ 2020年3月期~2024年3月期 決算短信もとに筆者作成

アバールデータの株価動向

続いて、アバールデータの直近5年間の株価の月足チャートを以下に示します。長期的な株価のトレンドとしては横ばいの状態です。2024年1月まで上昇トレンドを描いていましたが、そこから現在までは下落局面が続いています。2022年10月に付けた安値のラインに株価が接近しており、ここから切り返して上昇に転じられるか注目しています。

アバールデータの2020年1月から2025年1月までの株価月足チャート
出典:TradingView アバールデータ(6918) 株価月足チャート 
赤ライン:12カ月移動平均線 青ライン:24カ月移動平均線 緑ライン:60カ月移動平均線

アバールデータの株価割安度・収益性・株主還元

続いて、アバールデータの現在の株価がどの程度の水準感にあるか、また収益性や株主還元がどうなのか示す指標を以下の表に示します。

アバールデータの分析指標
PER11.0倍
PBR0.8倍
2024年3月期 ROE24.1%
2024年3月期 ROA19.0%
2024年3月期 売上12,580百万円
2024年3月期 営業利益率16.7%
配当利回り3.5%
配当性向37.1%
直近10年 配当実績増配8 減配0 据置2
出典:株式会社アバールデータ 2024年3月期決算短信 PER・PBR・配当利回りは2024年1月23日基準で計算

アバールデータの現在の株価は、PER:10.9倍、PBR:0.8倍と平均より低く、非常に割安な水準にあると捉えています。収益性についていえば、ROE:24.8倍、営業利益率16.7%と両方とも非常に高い水準で、稼ぐ力・効率よく利益へつなげる力が強いことがうかがえます。配当利回りが3.5%とやや高く、増配も積極的に行ってきていることから、株主還元の観点から見ても魅力的とみています。

アバールデータの将来性は?

アバールデータの業績がこれからどうなっていくのか、業績を押し上げる要因とリスクとなる要因をそれぞれ1つずつ挙げて紹介します。

業績プラス要因: AI半導体ブームの恩恵を受けて業績拡大

明るいライトで照らされたデータセンターのサーバ

アバールデータの業績を押し上げそうな要因として、AI半導体ブームが挙げられます。半導体製造装置メーカーは今後のAIサーバーなどの需要の拡大により継続して成長していくことが見込まれています。これらの企業を得意先として持つアバールデータもその恩恵を受け、成長を続けていける期待が持てます。

業績リスク要因:受託開発事業の売上比率の高さによる業績の不安定さ

一方で、アバールデータの業績のリスクと考えられる要因が、受託開発事業の売上比率の高さです。アバールデータでは自社開発製品を持っていますが、現時点では売り上げの比率の半分以上が受託開発製品によるものであり、顧客企業の業績に依存する部分が大きいというリスクがあります。

今後自社開発製品における売上を伸ばすことで、そのリスクを低減していけるかどうかがカギを握っていると考えます。

まとめ:高速通信技術+画像処理技術での活躍に期待!

今回の記事では、注目の企業として株式会社アバールデータをピックアップして紹介しました。アバールデータは、組込みシステム開発を得意とする電気機器メーカです。高速での通信を実現する独自技術近赤外線カメラを使った画像処理に強みを持っており、半導体製造装置メーカをはじめとした大手企業から信頼を得ています。

直近の業績を見ると、営業利益率15%以上の非常に高い水準を維持しており、2023年に売上高が過去最高を更新し成長を続けています。ROE20%以上と経営効率が高い点も注目に値します。株価の長期トレンドは横ばいの状態ですが、割安な水準で配当利回りも魅力的です。

良くも悪くも得意先である半導体製造装置メーカーからの受託開発が業績を左右する面が大きいため、今後近赤外線カメラを駆使した自社開発製品で売り上げを伸ばしていけるかに注目したいと考えています。