日本のさまざまな業種の中でも、収益性が高い企業に名を連ねているのが人材派遣サービス企業です。その中でも特に目立った収益性の高さを誇っているのが、「技術者派遣サービス企業」です。
そこで今回は、好業績をたたき出している技術者派遣サービス企業3社をピックアップして特集します。また各企業のビジネスモデルにどういった違いがあるのか、企業価値の分析結果についても共有します。ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
技術者派遣サービス企業とは?
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技術者派遣サービス企業は、社内で研究開発や設計・製品評価などを行うための技術者が不足している企業に向けて、自社で採用・育成した技術者人材を紹介、派遣する事業を行っています。その対価として派遣する技術者の派遣単価を売り上げとして受け取るというビジネスモデルになっています。
派遣社員を受け入れる企業からすれば、採用にかかるコストや技術者育成にかかるコストを削減できるメリットがあるため、昨今の人手不足の流れを受けて需要が伸びています。特に派遣技術者は求められる専門性やスキルの高さを武器に、派遣単価が高く設定できるため、高い利益を稼ぎ出している企業が多いです。
今回の記事では、特に収益性の高い以下の3社をピックアップし、それぞれの企業の特徴と業績の推移、投資先としてみたときの企業価値について分析した結果を紹介していきます。
- テクノプロHD(証券コード:6028)
- メイテックグループHD(証券コード:9744)
- アルプス技研(証券コード:4641)
1.テクノプロHD(証券コード:6028)
テクノプロHDは、国内では最大規模のエンジニア人材を誇る技術者人材派遣サービス企業です。また、技術者の専門分野も非常に幅広く、機械・自動車・電気・ITだけでなく、化学や医療、建設施工領域に至るまで、層の厚い技術者人材を揃えています。
今回の記事で紹介する他の2社との差別化ポイントとしては、事業規模の大きさを生かした以下が挙げられます。
- 国内だけでなく海外にも積極展開しており、グローバルに人材をそろえている
- 大規模なプロジェクト単位での受託も対応可能
- 技術者の派遣だけでなく、業務プロセスの最適化支援といった事業も手掛けている
直近の業績推移
テクノプロHDの直近5年間の業績の推移を以下のグラフに示します。営業利益率10%以上、ROE18%以上という高収益性を維持しながら、5年間順調に売上高を伸ばし続けていることが分かります。
引用元:テクノプロHD 2020年6月期~2024年6月期決算短信資料を基に作成
株価トレンド
テクノプロHDの2020年からの現在にかけての株価の月足チャートを以下に示します。
引用元:Trading View テクノプロHD(6028) 株価月足チャート
2020年の後半から長期的な上昇トレンドを描いていましたが、2023年に入ってから株価の上昇圧力が弱くなり、現在は横ばいの状態です。ここから上昇トレンドに戻るのか、それとも下降トレンドに転換するのか注意が必要な水準だと考えます。
ファンダメンタル分析
テクノプロHDが投資先として有望なのかどうか、企業価値について分析した結果を以下に示します。
ファンダメンタル分析指標 | |
PER | 16.2倍 |
PBR | 3.7倍 |
2024年6月期 売上高 | 219,218 百万円 |
2024年6月期 営業利益率 | 10.1% |
2024年6月期 ROE | 18.8% |
2024年6月期 ROA | 9.9% |
配当利回り | 3.5% |
配当性向 | 58.2% |
直近10年 配当実績 | 増配10 |
テクノプロHDは、PER16.2倍、PBR3.7倍と業績に見合った適正な株価水準にいるとみています。ROE18.8%、ROA9.9%と高い効率で収益を上げられる企業であることが見て取れます。また、配当利回りについては3.5%とやや高い利回りを得られるだけでなく、直近10年間は連続増配となっており、株主還元もしっかりしている企業だと考えます。
2. メイテックグループHD(証券コード:9744)
メイテックグループHDは、技術者の育成に力を入れている技術者派遣サービス企業です。自動車・機械・電気・IT分野の技術者をそろえており、特に設計開発業務に携わることのできる人材が多いです。この企業が、この記事で紹介する他2社との差別化ポイントとしては、以下が挙げられます。
- 製造業(自動車・機械・電気)とIT分野の技術者の育成に注力している
- 高度な専門性を持った技術者をそろえている
- 自社内での技術研修や育成プログラムを充実させ、技術者のレベルアップにつなげている
直近の業績推移
メイテックグループHDの直近5年間の業績の推移を以下のグラフに示します。2021年にいったん業績が落ち込みますが、V字回復を遂げています。また、営業利益率が15%以上を推移しており、この記事で紹介する他2社と比べても、ずば抜けた利益を稼ぎ出す力の高さを持っていることがわかります。
引用元:メイテックグループHD 2020年3月期~2024年3月期決算短信資料を基に作成
株価トレンド
メイテックグループHDの2020年からの現在にかけての株価の月足チャートを以下に示します。
引用元:Trading View メイテックグループHD(9744) 株価月足チャート
2021年から現在に至るまで長期的な上昇トレンドが継続しており、順調に株価上昇が続いていることが分かります。
ファンダメンタル分析
メイテックグループHDが投資先として有望なのかどうか、企業価値について分析した結果を以下に示します。
ファンダメンタル分析指標 | |
PER | 21.3倍 |
PBR | 5.4倍 |
2024年3月期 売上高 | 126,976 百万円 |
2024年3月期 営業利益率 | 13.9% |
2024年3月期 ROE | 26.2% |
2024年3月期 ROA | 14.1% |
配当利回り | 5.6% |
配当性向 | 72.1% |
直近10年 配当実績 | 増配9 減配1 |
メイテックグループHDのPERは21.3倍、PBRが5.4倍とやや割高感が感じられる株価水準になっています。一方で、ROE26.3%、ROA14.1%と収益性については文句なしに高い企業だといえます。配当利回りが5.6%と非常に高く、株主への利益還元姿勢の強い企業であることが見て取れます。ただ配当性向が72.1%と高く、事業の成長よりも株主還元に傾きすぎていると思われる点は気になります。
3.アルプス技研(証券コード:4641)
株式会社アルプス技研は、設計開発業務に携わる技術者の比率を多くそろえている技術者派遣サービス企業です。機械・電気・IT・化学の4つの分野に絞った技術者を育成し派遣しています。
- 半導体関連産業でエンジニアに強い
- プロジェクト支援型の技術者派遣にも対応
- 高齢者向け住宅事業など、技術者派遣に頼らない事業の多角化を図っている
直近の業績推移
アルプス技研の直近5年間の業績の推移を以下のグラフに示します。この記事で紹介している他の2社と比べると売上高の規模は小さいですが、ROEが22%以上を推移するレベルの非常に高い効率で利益を稼ぎながら、売上高を年々伸ばし続けている企業であることが分かります。
引用元:アルプス技研 2019年12月期~2023年12月期決算短信資料を基に作成
株価トレンド
アルプス技研の2019年から現在までの月足チャートを以下に示します。2023年初めから長期的な上昇トレンドに入っていましたが、現在は短期的な調整局面に入っており、ここからまた上昇トレンドに戻っていけるか注目です。
引用元:Trading View アルプス技研(4641) 株価チャート
ファンダメンタル分析
アルプス技研を投資先としてみた場合の企業価値について分析した結果を以下に示します。
ファンダメンタル分析指標 | |
PER | 14.2倍 |
PBR | 2.8倍 |
2023年12月期 売上高 | 46,216 百万円 |
2023年12月期 営業利益率 | 10.8% |
2023年12月期 ROE | 22.7% |
2023年12月期 ROA | 15.0% |
配当利回り | 3.5% |
配当性向 | 55.6% |
直近10年 配当実績 | 増配9 減配1 |
アルプス技研のPERは14.2倍、PBRは2.8倍とやや割安な株価水準にいます。収益性についてはROEが22.7%、ROAが15.0%と非常に稼ぐ効率が高い企業と言えます。配当利回りは3.5%とやや高い配当を得られ、直近10年間で増配を9回実施していることから、今後も配当金の増加が期待できる企業だと考えています。
まとめ:高収益な技術者派遣サービス企業に注目!
今回の記事では、昨今の技術者の人材不足の流れを追い風に業績を拡大している技術者派遣サービス企業を3社ピックアップして、各企業の特徴と業績について分析した結果を紹介しました。各企業の特徴と企業価値の分析結果を簡単にまとめると、以下の表になります。
テクノプロHD | メイテックグループHD | アルプス技研 | |
強み | 海外展開積極的 大規模プロジェクトへの 対応力高い | 高単価人材を育てる 技術者教育に注力 | 半導体産業への 人材派遣に強み |
営業利益率 | 10.1% | 13.9% | 10.8% |
ROE | 18.8% | 26.2% | 22.7% |
PER | 16.2倍 | 24.3倍 | 14.2倍 |
配当利回り | 3.5% | 5.6% | 3.5% |
いずれの企業も、営業利益率が10%以上かつ、ROE15%以上と非常に収益性が高く稼ぐ力の大きい企業といえます。さらに、配当利回りも3%を上回っていて増配実績が多いため、株主還元姿勢が強いことがわかります。現状は株価の割安感が薄いですが、投資先として注目に値する企業だと考えています。