今注目している銘柄をピックアップして紹介していきます。今回は、金融機関や公共機関向けのシステムを提供する企業アイティフォーについて特集します。アイティフォーとはどんな企業で、どんな強みを持っているのか、また現在の株価水準や業績について分析した結果を共有したいと思います。興味があれば、ぜひ参考にしてみてください。
アイティフォーとはどんな企業?
まずはアイティフォーとはどういった企業なのか紹介していきます。以下の表がアイティフォーの会社概要です。
企業プロフィール | |
会社名 | 株式会社アイティフォー ITFOR Inc. |
証券コード | 4743 |
業種 | 情報・通信業 |
株式市場 | 東証プライム市場 |
本社所在地 | 東京都千代田区一番町21番地 一番町東急ビル 受付12階 |
設立年 | 1972年12月2日 |
資本金 | 1,124,000,000円 |
従業員数 | 494名(2023年12月31日現在) |
事業内容 | ▼金融機関向けソリューション ▼公共機関向けソリューション ▼小売業/EC事業者向けソリューション ▼キャッシュレス決済ソリューション ▼コンタクトセンターソリューション ▼セキュリティソリューション これらをつなぎ合わせる基盤ソリューションとシステム導入後の保守、運用を提供。 |
アイティフォーの事業内容

株式会社アイティフォーは、銀行や公共機関、小売業者向けにシステムを開発し提供するシステムインテグレータ企業(SIer)です。中核事業である3つの事業についてそれぞれ紹介します。
金融機関向けソリューション事業
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アイティフォーは、金融機関向けに個人ローン契約システムや債権回収システムを提供しており、70%を超える地方銀行で業界スタンダードとして採用される圧倒的な実績を持っています。アイティフォーが金融機関向けに主に提供しているシステム3つをそれぞれ紹介します。
融資先を増やすテレマーケティングシステム(TMS)
金融機関では、中小企業や個人事業主の方々とローン契約を結んでお金を貸し、返済時に利息を上乗せして返してもらうことで収益源としています。そのため、金融機関としては、なるべく多くのしっかり返済してくれそうなお客さんにローンを契約してもらいたいというニーズがあります。
そこでアイティフォーでは、このニーズにこたえるテレマーケティングシステム(TMS)を提供しています。このシステムは、個人の信用情報のデータベースから、返済見込みの高い顧客を優先して選び出して、自動でセールス電話をかけたり、ダイレクトメールを送ったりすることで、ローン契約申し込みにつなげる支援を行います。
個人ローン業務支援システム「SCOPE」
ローン契約でお金を借りる側のローン契約者・お金を貸す側の金融機関の両方の悩みを解決するのが、アイティフォーの個人ローン業務支援システム「SCOPE」です。従来の個人ローン契約手続きでは、以下の問題点があり、契約完了までに膨大な労力がかかっていました。
- ローン契約申込み時に、契約書に手書きで記入したり、印鑑を押したり手間がかかる
- 融資したお金を返してくれそうか審査する際に、必要な信用情報を集めてくるのが大変
- ローン契約の審査業務を専門の人しかできないので、契約完了まで時間がかかる
アイティフォーでは、これらの問題を解決する個人ローン業務支援システム「SCOPE」を提供しています。このシステムは以下の優れた機能を持っており、ローン契約においてお金を借りる契約者・お金を貸す金融機関両方の手間を減らせるため、業界スタンダードとして支持されています。
- タブレット上での操作だけでローン申し込み手続きが終わるので手書きも印鑑もいらない
- ローン契約者の信用情報をWeb上で一括管理できるので、すぐに審査が始められる
- 一部の審査内容については、自動化することで契約審査業務をスピードアップ
債権管理システム「CMS V5」
無事にローン契約が済んで契約者にお金を借りてもらったら、契約内容に沿って確実にお金を返済してもらう必要があります。そこで役立つのがアイティフォーの債権管理システムCMS V5です。このシステムには以下の機能があり、ローン契約を結んだ中小企業や個人事業主から、借りたお金+利息を着実に返済してもらう支援を行います。
- 各ローン契約者の返済予定や延滞実績の有無といった情報をデータベース化して活用
- 支払いの延滞が発生している顧客には、自動で電話をかけて返済を促す
- それでも返済してもらえない時は、保証会社から代わりにお金を返してもらう手続きを支援
公共機関向けソリューション
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地方自治体などの公共機関向けシステムもアイティフォーは手掛けています。地方自治体では、住民の方々から税金を確実に徴収する必要があるという金融機関と共通した悩みを持っていました。そこで ITFORはCARSというシステムを提供しており、地方自治体の税金の徴収業務を自動化し、負担を減らしています。 このシステムは教育機関向けにも採用が進んでおり、給食費の徴収などの事務負担を減らすメリットを提供しています。
小売業向けソリューション
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アイティフォーの比較的新しい事業として、小売業者向けのシステムの提供も行っています。近年、小売店ではキャッシュレス決済の導入が進んでいる一方で、導入コストの高さから導入に踏み切れない小売業者も多いという課題がありました。
そこでアイティフォーでは、RITSというシステムを提供しています。 RITSは、キャッシュレス決済を導入するだけでなく、決済内容から顧客の購入動向などお客さんを増やすために役立つ情報をデータベース化してくれるシステムです。さらに、商品の発注や在庫管理システムもまとめて一本化しています。 これらの機能を備えたシステムを他の企業よりも安く提供しているため、導入コストの高さを理由にキャッシュレス化に後ろ向きだった百貨店などの小売り店舗を中心にシェアを伸ばしています。
アイティフォーの強みとは?
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アイティフォーは、ほかのIT企業と比べて何が優れているのかについて紹介します。アイティフォーは以下の点で差別化を図っています。
- 日本初のオートコールシステムを提供してきた長年の実績
- 盤石な経営体制
- 金融システムの提供に特化したビジネスモデル
日本初のオートコールシステムを提供してきた長年の実績
アイティフォーは、1983年にローン契約したお金の返済を促す電話を自動でかけるオートコールシステムを日本で初めて開発しました。この実績が評価され70%を超える圧倒的なシェアで地方銀行に債権回収システムが長年採用され続けています。この実績が、顧客に信頼感を与えて業績拡大につながっていると考えます。
盤石な経営体制
アイティフォーは、地方銀行や自治体を主要顧客としていることから、システム開発⇒保守運用⇒システム更新と安定的に収益を得続けられるビジネスモデルを築いており、無借金経営を続けています。この盤石な経営体制があるからこそ、安定して確保した収益を、小売店向け事業や新規事業にも投入できる強みを持っています。
金融システムの提供に特化したビジネスモデル
アイティフォーは、金融機関における債権回収システムを中心としたシステムに開発リソースを絞っています。これにより、システム開発能力の高さを維持し、後発の競合他社を寄せ付けない独自のビジネスを確立しているのも強みとなっています。
投資先としてみたアイティフォー
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続いて、投資先としてアイティフォーを見たときにどうなのか、直近の業績や株価動向についてチェックし分析した結果について共有します。
アイティフォーの業績
直近5年間のアイティフォーの業績(売上高・営業利益率・ROE)を以下のグラフに示しました。このグラフから、営業利益率10%以上という高い水準を維持しながら、売上高を着実に伸ばし続けていることが分かります。
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アイティフォーの株価トレンド
直近5年間の株価の月足チャートを以下に示します。2023年に入ってから長期的な上昇トレンドが続いていましたが、2024年7月に年初来高値を付けてから伸び悩んでいる状態です。まだ上昇トレンドは継続しているとみているため、どこで株価が切り返してくるか注目しています。

※赤ライン:12か月移動平均線 青ライン:24か月移動平均線 緑ライン:60か月移動平均線
アイティフォーのファンダメンタルズ分析
アイティフォーの株価水準や業績などの指標について、以下の表にまとめました。
ファンダメンタル分析指標 | |
PER | 13.0倍 |
PBR | 1.9倍 |
2024年3月期 売上高 | 20,652 百万円 |
2024年3月期 営業利益率 | 18.1% |
2024年3月期 ROE | 15.4% |
2024年3月期 ROA | 12.1% |
配当利回り | 3.8% |
配当性向 | 39.3% |
直近10年 配当実績 | 増配7 据置3 |
アイティフォーの株価水準については、PER:13倍、PBR1.9倍とやや割安な水準にあると捉えています。収益性については、営業利益率18.1%、ROE15.4%と高い水準にあることから、会社の資本を効率よく利益につなげる力が高い企業であることが見て取れます。配当については、利回り3.8%と平均より高い水準かつ配当性向も39.3%と、企業成長と株主還元にバランスよく利益を配分しています。
まとめ:金融機関向けシステムを中心に着実に成長を遂げる
今回の記事では、地方銀行向けの金融システムや自治体向けの基幹システムを提供しているIT企業、アイティフォーについてピックアップして解説しました。アイティフォーは、個人ローン契約やローンで融資したお金の回収を支援するシステムに強みを持っており、その開発実績を生かして公共機関や小売業向けのシステムも提供しています。日本初のオートコールシステムの開発を足掛かりに、地方銀行の債権管理システムで70%以上の圧倒的シェアを握っており、無借金経営を続けている盤石な経営体制も魅力の一つです。
業績についていえば、営業利益率・ROEともに10%以上の高い水準を維持しつつ売上高を年々伸ばしており、効率よく稼ぐ力の高い企業と言えます。今後、地方銀行・自治体からの収益をベースに、ほかの業種へのシステム提供を広げて成長を続けていけるか注目していきたいと考えています。