個人的に注目している銘柄を1社ピックアップして紹介していきます。今回はグローバルに貨物輸送サービスを展開している企業、内外トランスラインについて特集します。内外トランスラインとはどんな企業で、どんな強みを持っているのか、また現在の株価水準や業績について分析した結果を共有したいと思います。興味があれば参考にしていただけると嬉しいです。
内外トランスラインはどんな企業?
まずは内外トランスラインの基本的な会社情報について紹介します。企業の簡単なプロフィールを以下の表に示します。
企業プロフィール | |
会社名 | 内外トランスライン株式会社 NAIGAI TRANS LINE LTD. |
証券コード | 9384 |
業種 | 倉庫・運輸関連業 |
株式市場 | 東証プライム市場 |
本社所在地 | 大阪市中央区備後町2丁目6番8号 サンライズビル5階 |
設立年 | 1980年5月1日 |
資本金 | 2億4393万円7240円 |
従業員数 | 234名(単体) 731名(連結) |
事業内容 | ▼貨物利用運送事業(外航海運・国際航空・鉄道・内航海運) ▼海空陸複合一貫輸送 ▼陸上運送取次業 ▼海運代理店業 ▼通関業 ▼損害保険代理店業 |
内外トランスラインの事業内容
内外トランスラインの事業内容としては、大きく分けて以下の2つがあります。
- 国際貨物輸送事業
- フォワーディング事業
国際貨物輸送事業

内外トランスラインの主力事業が、国内外への荷物の輸出・輸入を取り仕切る国際貨物輸送事業です。コンテナ船で荷物をまとめて運ぶ海上輸送、飛行機で荷物を運ぶ航空輸送サービスを行っています。内外トランスラインは、複数のお客さんの小口荷物をまとめて船で運ぶ海上混載輸送に特に強みを持っています。コンテナ1つを埋められるほど多くの荷物を輸送しない顧客や、なるべくコストを抑えて国際輸送したい顧客から支持を集めています。
フォワーディング事業
内外トランスラインの第2の事業が、顧客の荷物の引き取りから国際輸送、輸送先の国の陸上輸送まですべて手配するフォワーディング事業です。荷物を国際輸送する場合、荷物を輸出するための手続きや、荷物の届け先の国に入れるための税関手続き、各種輸送手段の手配など非常に複雑なうえ手間がかかります。
そういった複雑なかつ面倒な業務をすべて一括して引き受けるサービスがフォワーディング事業です。このサービスを利用すれば、顧客は運びたい荷物を渡すだけで、あとは内外トランスラインに任せられるので、非常に負担が軽くて済みます。
内外トランスラインの強みとは?

内外トランスラインはほかの輸送企業と何が違うのでしょうか。内外トランスラインだからこその強みを挙げると、以下の3つがあります。
- 世界中に構築した独自の運送ネットワーク
- 最適な輸送方法を提案できる対応力
- 混載輸送に特化して積んできた実績
世界中に構築した独自の運送ネットワーク

内外トランスラインの1つ目の強みとして、各国に営業拠点を設置し各国の輸送業者との深いつながりを構築していることが挙げられます。顧客が荷物を送る先は、アジア各国やヨーロッパ・北米など多岐にわたります。内外トランスラインではアジアを中心とした各国に営業拠点を設け独自の輸送ネットワークを持つことで、世界400か所以上の豊富な仕向け地と高い運航頻度を実現しています。これにより、顧客の荷物をより早く的確に届けることができ、顧客満足度の上昇にもつながっています。
他にも、海外拠点ネットワークを構築することで、日本から海外への輸出だけでなく、海外から日本への輸入でも売り上げを伸ばせる利点も生んでいます。このネットワークは、地道に各国に拠点を設けて企業活動を行ってきたからこそ得られる強固な参入障壁になっています。
最適な輸送方法を提案できる対応力

内外トランスラインの2つ目の強みとして、豊富な輸送方法のバリエーションの中から顧客に最適なものを提案できる対応力の高さが挙げられます。内外トランスラインでは、以下のさまざまな輸送サービスを展開しています。
- 海上混載輸送:小口荷物もリーズナブルに海外に輸送
- 輸入混載海上輸送:輸出だけでなく輸入にも対応
- 航空輸送:短納期での輸送を実現
- 危険品混載輸送:取り扱いの難しい危険物の輸送にも対応
- 食品輸送サービス:温度管理が必要な冷蔵・冷凍品にも対応
- 特殊貨物輸送:通常の方法では運べない荷物も対応
この輸送方式のバリエーションの豊かさが、顧客が運びたい荷物のサイズや性質・重量を加味し、顧客にとって最適な輸送方式を提案し実現できる対応力の高さにつながっています。
海上混載輸送に特化して積んできた実績
内外トランスラインの3つ目の強みとしては、海上混載輸送に特化して積んできた実績が挙げられます。以下のグラフに示す通り、内外トランスラインの売り上げの多くは、この混載輸送が占めています。
出典:内外トランスライン株式会社 個人投資家向け会社説明会資料(2024年6月21日)
混載輸送では、複数の顧客から運びたい荷物をまとめてコンテナに入れて輸送する必要があります。一方で、輸送にかかる運賃はコンテナ単位で発生するため、なるべくコンテナを荷物で埋めて輸送するノウハウが必要になります。そうしなければ、顧客から高い輸送料金を取らないと利益が出ないためです。
その点、内外トランスラインは混載輸送に特化して事業を成長させてきた実績があります。複数の顧客との輸送スケジュールの調整・交渉をこなし、効率を追い求めた輸送を実現できるのはこの企業の大きな強みとなっています。
投資先としてみた内外トランスラインは?
ここからは、内外トランスラインを投資先として考えるときの業績や株価動向について分析した結果について共有します。
内外トランスラインの業績推移
内外トランスラインの直近5年間の業績の推移をグラフとして示します。2021年から新型コロナ感染拡大に伴うコンテナ運賃の上昇を背景に急速に業績が伸びました。ただ、コンテナ運賃の高騰が収まった現在も、営業利益率10%以上・ROE15%以上の高い利益水準を維持できています。

内外トランスラインの株価動向
内外トランスラインの直近5年間の株価月足チャートを以下に示します。
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※赤ライン:12か月移動平均線 青ライン:24か月移動平均線 緑ライン:60か月移動平均線
2021年から、業績の好調さを背景に長期の上昇トレンドが発生し、2024年9月現在でもそのトレンドは継続していることが見て取れます。
内外トランスラインのファンダメンタルズ分析
内外トランスラインの収益性や配当利回りなどの指標をまとめて以下の表に示します。
ファンダメンタルズ 分析指標 | |
PER | 8.3倍 |
PBR | 1.27倍 |
2023年12月期 ROE | 16.8% |
2023年12月期 ROA | 13.4% |
2023年12月期 売上 | 32,280百万円 |
2023年12月期 営業利益率 | 13.0% |
配当利回り | 3.0% |
配当性向 | 27.2% |
直近10年 配当実績 | 増配8 据置2 |
株主優待 | 年1回、カタログギフトを贈呈 100~199株保有:1,500円相当 200~3999株保有:2,500円相当 4000株以上保有:5,000円相当 |
内外トランスラインの株価水準については、PERが8.3倍、PBRが1.2倍と低い水準であることから、割安な水準にあると考えます。収益性については、営業利益率13%、ROE15.8%と高水準にあり稼ぐ力を持っている企業であることが見てとれます。配当利回りについては3.0%と平均的な水準ですが、減配が今まで一度もないことや、12月末の権利確定日までの保有株数に応じ、年1回カタログギフトをもらえることを加味すれば、魅力的な株主還元を行っている企業だといえます。
内外トランスラインの将来性について
内外トランスラインは、日本発輸出シェアNo.1を誇る海上混載輸送ビジネスを主力としながらも、第2の柱としてフォワーディング事業を育成中です。内外トランスラインが今までに構築してきたグローバルな輸送ネットワークを駆使すれば、このフォワーディング事業の成長によって事業を拡大していく期待が持てると考えています。
まとめ:混載輸送+フォワーディングの2本柱での成長に期待!
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今回は、国をまたいで荷物を届ける国際輸送ビジネスを展開する企業、内外トランスラインについてピックアップして紹介しました。内外トランスラインは、海上輸送、航空輸送を駆使して国内外に荷物を届ける事業を営んでいる企業です。特に、1つのコンテナに複数の顧客の荷物を詰めて輸送する海上混載輸送に強みを持っています。混載輸送は複数の顧客とやり取りしながら、高効率な輸送スケジューリングを行うノウハウを求められるため、長年の実績を積んでいる内外トランスラインは国内発輸出シェアNo.1を誇っています。
内外トランスラインを投資先としてみれば、営業利益率10%以上、ROE15%以上の収益性の高さを持ちながらも、PER8.3倍の割安な株価水準にあると考えています。配絵+株主優待の株主還元姿勢の強さも魅力の一つです。第2の柱として育てているフォワーディング事業も、内外トランスライン独自の国際輸送ネットワークを生かした成長を期待できるため、注目している企業の一つです。