【半導体株】半導体関連銘柄の上昇とけん引役NVIDIAについて特集

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最近、「半導体関連銘柄」の株価についてよく話題になっているけど、なぜ?

2024年に入ってから、急速な勢いで日経平均株価を押し上げているのが、「半導体関連銘柄」と呼ばれる企業の株価の上昇です。普段皆さんの生活とは関連が薄いので、なぜ株価が上がっているのか実感がわかない方も多いと思います。

そこで今回は、半導体関連銘柄とは何なのか、またそれらの株価上昇の理由と、今後の動きについて株価上昇のけん引役となっている米国企業NVIDIAについて触れながら解説していきます。

今回の記事を読めば、なぜ半導体関連銘柄の株価が上昇しているのか理解できるはずです。ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。

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半導体関連銘柄とは?

シリコンウエハを持つ防塵服を着た人

まず、半導体関連銘柄とは何かについて説明していきます。半導体関連銘柄は「半導体製造装置メーカ」・「半導体設計開発メーカ」・「半導体材料メーカ」の3つに分類される半導体を製造するうえで欠かせない企業のことです。

代表的な半導体関連銘柄

それぞれの代表的な企業と主力製品をざっくり紹介します。

半導体製造装置メーカ
コード企業名主力製品
7735SCREEN HD半導体材料のウエハの洗浄装置
6920レーザーテックウエハや半導体回路の原版(マスク)を検査する装置
8035東京エレクトロンウエハ上に感光液を塗布し、現像する装置
6857アドバンテストウエハ上の回路の動作を確認する検査装置
6146ディスコウエハを研磨、切断してチップにする装置
6315TOWAチップを樹脂で覆う装置
半導体設計開発メーカ
コード企業名主力製品
6526ソシオネクストカスタムSoC・ロジック半導体
6723ルネサス車載用マイコン・エッジAI処理用半導体
半導体材料メーカ
コード企業名主力製品
4063信越化学工業シリコンウエハ
3436SUMCOシリコンウエハ
4185JSR露光用フォトレジスト
4186東京応化工業露光用フォトレジスト
4626太陽HD絶縁用ソルダーレジスト

これらの企業がパソコンやスマートフォンに入っている半導体製品の製造を支えています。

半導体関連銘柄の2024年の株価の動き

前項で紹介した各企業の年初来からの株価の上昇を一覧にしたものが下表です。いかに半導体関連銘柄、特に半導体製造装置メーカの株価の上昇が著しいかが分かります。

コード企業名2024/1/4
株価
2024/3/15
株価
上昇率
7735SCREEN HD112001757556.92%
6920レーザーテック35550381307.26%
8035東京エレクトロン240003541047.54%
6857アドバンテスト4501643642.99%
6146ディスコ328304808046.45%
6526ソシオネクスト2500361144.44%
6723ルネサス245424580.16%
4063信越化学工業5640646914.70%
3436SUMCO2086233111.74%
4185JSR404043156.81%
4186東京応化工業3042430941.65%
※ 1社ほぼ上昇していない銘柄もあるが・・

半導体関連銘柄の株価はなぜ上がっている?

2024年に入ってから急速に株価水準を切り上げてきた半導体関連銘柄ですが、なぜ株価がこれほど上昇しているのでしょうか。その理由としては、以下の二つが考えられます。

半導体関連銘柄の株価の上昇要因
  • AIサーバーの需要拡大期待
  • シリコンサイクルの回復期待

AIサーバーの需要拡大期待

大量に並ぶAIサーバーのイメージ

半導体関連銘柄の株価上昇の要因の1つ目として、AIサーバーの需要拡大期待が挙げられます。AIサーバーとは、最近話題となっているChat-GPTやGoogleのGeminiなどAI技術を実現するためにサーバーのことです。

これらのサーバーには、AI向けの機械学習をさせるための半導体が搭載されています。特に需要が強いのが、画像処理に強いGPU(Graphic Processing Unit)と呼ばれる半導体です。この製品で圧倒的なシェアを握るのが米国企業「NVIDIA」というわけです。

AIの画像認識技術のイメージ図

AI技術の高性能化は、どれだけ多くの学習をAIにさせているかにかかっているといっても過言ではありません。ゆえに、GAFAMを筆頭とするIT企業はAI技術で差別化を図るため、自社用のAIサーバーを大量に保有したいニーズがあります。

すると、AIサーバーに使われる半導体素子の需要が伸びる ⇒ GPUをはじめとした先端半導体を製造する半導体製造装置の需要も伸びるという論理で、業績拡大期待で株価が上がっているというわけです。

シリコンサイクルの回復基調期待

半導体関連銘柄の2つ目の株価上昇要因として、「シリコンサイクルの回復基調期待」が挙げられます。半導体製品の出荷台数は、シリコンサイクルとよばれる周期的な需要の変動があります。半導体需要の拡大と、在庫が積みあがりすぎたことによる需要減少を繰り返しながら増加傾向を続けています。

直近は2020年に新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワーク需要の高まりを受け半導体製品需要が拡大しましたが、その反動で直近まで半導体出荷台数の減少傾向が続いていました。

シリコンサイクルのイメージ

2024年に入ってから、半導体製品の出荷額が底打ちの兆しを見せ始めており、それに続いて半導導体製造装置・半導体材料の需要も回復してくる期待があり、株価が上昇しているということです。

株価上昇のけん引役NVIDIAはなぜ強いのか?

株価上昇要因の1つ目で挙げた「AIサーバの需要拡大」についてカギを握っているのが、米国の半導体企業「NVIDIA」です。

なぜNVIDIAという企業がカギを握っているのか、その理由としては以下の2つが挙げられます。

  • AI処理においては、CPUよりも並列処理できるGPUが向いているから
  • AI開発環境「CUDA」が優れモノだから

AI開発に、CPUよりも並列処理できるGPUが向いているから

NVIDIAがAIサーバの需要拡大のカギを握っている1つ目の理由として、AI開発にCPUよりもGPUの方が向いていることが挙げられます。

現在のAI技術といえば、Chat-GPTに代表される入力された文章から、そのあとに続く文章を推測する大規模言語モデル(LLM)や、AIが学習した画像から特徴を抽出し、対象が何か識別する画像認識処理技術があります。

こういったAIの開発においては、同様の計算を複数回繰り返す必要があり、複雑で多様な計算ができるCPUよりも、高速で並列処理できるGPUの方が向いていました。そのため、AIへ大量の画像データを学習・計算させるためにGPUが取り合いの状態になっています。

このGPUでNVIDIAは9割以上の圧倒的なシェアを握っており独壇場の状態です。それは、旧来からNVIDIAのみが画像処理用途に使われていたGPUに特化し、技術を磨き続けてきたおかげと言えます。

AI開発環境である「CUDA」が優れモノだから

NVIDIAがAIサーバの需要拡大のカギを握っている2つ目の理由として、NVIDIAが提供している「CUDA」と呼ばれる開発環境ソフトウエアが優れているという理由があります。単純にGPUがAI開発に向いているというだけなら、NVIDIA以外の企業もGPUを作って売り出せば、NVIDIAの優位性は薄れるはずです。

しかし、AI開発環境にNVIDIAがシェアを握るもう一つのポイントがあります。開発者はAIに計算や学習をさせるためのプログラムを記述する必要があるのですが、この記述を開発者がしやすくするために以下のような工夫をCUDAは取り入れています。

  • 特殊なプログラミング言語でなく、なじみのあるC/C++に近い形で記述できるようにした
  • 頻繁に使われる計算処理を簡単に実行できるようライブラリを充実させた
  • 使いやすいデバックツールの提供

AI開発を行う技術者からすれば、これらの機能が完備されていることがNVIDIAのGPUを使う大きなメリットとして働くため、NVIDIAのGPUが圧倒的なシェアを維持できる原動力となっていると考えられます。

半導体関連銘柄の今後の動きについて

上昇する株価チャートと矢印

半導体関連銘柄の株価が今後どのような動きを見せてくるのかについてですが、「目先割高感が強く値上がりしづらいが、ある程度調整が入ったところでまた上昇トレンドに戻る」と考えています。その理由とししては、以下の2つが挙げられます。

  • いずれの企業もPER(株価収益率)が平均を上回っており割高
  • 半導体分野において、日本企業のシェアが依然として高い水準にある

いずれの企業もPER(株価収益率)が平均を上回っていて割高

半導体関連銘柄が値上がりしづらい理由について、半導体関連銘柄のPERが高く割高感が強いことを挙げます。株価の割安・割高感を示す指標の一つとして、PER(株価収益率)があります。PERが高いほど、その企業への成長期待が高く、割高感が強くなります。

日本企業の平均的なPERは15倍程度の水準ですが、下表に示すように半導体関連銘柄のPERは軒並み高く、105倍を超える水準の企業もあります。

コード企業名2024/3/15
株価
PER
(3/15株価基準)
7735SCREEN HD1757526.0
6920レーザーテック3813070.2
8035東京エレクトロン3541048.4
6857アドバンテスト643673.6
6146ディスコ4808070.1
6526ソシオネクスト361128.3
6723ルネサス2458
4063信越化学工業646925.1
3436SUMCO233117.3
4185JSR4315105.4
4186東京応化工業430929.7
※PERは、各企業の直近の決算短信における予想1株当たり純利益から計算

 このデータをもとに考えると、直近の株価水準においては、半導体関連銘柄は投資家の期待が先行し、割高な水準まで買われており、買いを入れづらいと考えています。

半導体分野において、日本企業のシェアは依然として高い水準にある

値上がりしづらい半導体関連銘柄の株価が再度上昇すると考える理由は、半導体分野における日本企業の世界シェアの大きさです。以下の例に示す通り、各社世界No.1のシェアを誇る製品が数多くあります。これは、今後も日本の半導体関連企業の成長性が高いことをうかがわせます。

  • SCREEN HD:枚葉式・バッチ式洗浄装置 世界シェアNo.1 [1]
  • レーザーテック:フォトマスク・マスクブランクス欠陥検査装置 世界シェアNo.1 [2] 
  • 東京エレクトロン:塗布現像装置・ガスケミカルエッチング装置 世界シェアNo.1 [3]
  • アドバンテスト:半導体テスタ 世界シェアNo.1 [4]
  • ディスコ:ダイシングソー・グラインダ・ポリッシャ 世界シェアNo.1 [5]
  • 信越化学工業:シリコンウエハ 世界シェアNo.1 [6]
  • JSR:フォトレジスト 世界シェアNo.1 [7]
出典:[1]  株式会社SCREEN HD マーケットデータ
   [2]  レーザーテック株式会社 個人投資家の皆さまへ
   [3]  東京エレクトロン株式会社 東京エレクトロンを知る
   [4]  株式会社アドバンテスト アドバンテストの強み
   [5]  株式会社ディスコ よくあるご質問
   [6]  信越化学工業株式会社 数字で見る信越化学
   [7]  株式会社JSR JSRのトップクラス製品

これらの優れた製品で日本企業が高いシェアを維持し続ける限りは、日本の半導体関連企業の株価は一時的な調整を挟みつつも、堅調な値動きを続けると考えています。

まとめ:半導体関連銘柄は目先割高感も、押し目を狙いたい

今回の記事では、2024年に入ってから株価が急伸を続けている日本の半導体関連銘柄と、そのけん引役となっている米国企業NVIDIAについて紹介しました。内容をおさらいすると、日本の半導体関連銘柄が上昇している理由としては、以下の二つを挙げました。

半導体関連銘柄の株価の上昇要因
  • AIサーバーの需要拡大期待
  • シリコンサイクルの回復期待

このうち、AIサーバの需要拡大期待をけん引している企業が、米国のNVIDIAです。NVIDIAがAIサーバにおいてカギを握っている理由としては、以下の2つを挙げて紹介しました。

  • AI処理においては、CPUよりも並列処理できるGPUが向いているから
  • AI開発環境「CUDA」が優れモノだから

そして、日本の半導体関連銘柄のこれからの株価動向については、「PERから判断すれば、直近の割高感は否めません。しかし、日本の半導体関連企業にはシェアNo.1を誇る製品が多数あり、今後業績が伸びていくことは期待が持てるため、ある程度の株価調整を挟みつつ上昇トレンドが続くと予想します。