現在日本株のけん引役となっている半導体関連銘柄について、先週気になるニュースが入ってきたため紹介します。2024年7月8日に、日米の半導体企業10社が手を組む「US-JOINT」の設立が発表されました。この記事ではUS-JOINTとは何なのか、またなぜ注目に値するかについて解説していきます。また関係する日本企業についてもそれぞれ紹介します。ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
- US-JOINTとは何なのかが分かる
- US-JOINTがなぜ注目すべきなのかわかる
- US-JOINTとどんな日本企業が関係しているかが分かる
半導体企業連合 US-JOINTとは?
引用元:レゾナックHD シリコンバレーで日米の企業10社による次世代半導体パッケージのコンソーシアム設立
US-JOINTは、日本とアメリカの半導体製造分野で活躍している企業10社が手を組んだ企業連合のことです。日本からは6社・アメリカからは4社の企業が参加しています。参加している企業の一覧と、各企業の得意分野を合わせて以下に示します。
- レゾナックHD(4004):半導体チップ接着用フィルム
- 東京応化工業(4186):配線を形成するための露光用薬品(フォトレジスト)
- メック(4971):銅を精密に除去するための薬品
- TOWA(6315):半導体モールディング装置
- アルバック(6728):真空での成膜装置
- ナミックス:半導体用封止材料
- Azimuth Industrial:半導体パッケージの組立
- KLA Corporation:半導体検査装置
- Kulicke and Soffa Industries:半導体チップと基板の配線をつなぐボンディング装置
- Moses Lake Industries:銅メッキ技術
この企業連合は、半導体のパッケージング分野において日米の企業が手を組むことで、さらなる研究開発のスピードアップを図ることを目的に、日本のレゾナックHDが主導して設立されました。活動拠点はアメリカのシリコンバレーに置いており、アメリカの有力半導体企業と密接に連携を取りながら研究開発を進めていく予定です。2025年の稼働開始を予定しています。
US-JOINTがなぜ注目すべきなのか?
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今回紹介するUS-JOINTの設立が注目すべきニュースだと考えるポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
- 半導体の微細化に向けて、パッケージング技術がカギを握っている
- 半導体パッケージング技術は、日本企業が世界をリードする分野
- 半導体分野での日米関係の強化につながると期待できる
半導体の微細化に向け、パッケージング技術がカギを握っている
1つ目のポイントとして、半導体の微細化が進んでいくにつれ、パッケージング技術の重要度が増してくるためです。ここ数年で生成AIなどの新しい技術を実現するために、最先端の半導体では配線幅を細くして対応してきました。しかし、それに伴い製造コストもどんどん上がり、限界が見えてきています。
そこで、INTELやAMDといった半導体チップメーカーの次なる戦略として、用途に応じ配線幅の違う複数のチップを一つのパッケージに収めるチップレット方式を取り入れ始めました。これは特に計算能力を必要とするチップだけ最先端の細い配線幅で作って、他の部分は太い配線幅で作ることで、チップの製造コストを下げようという試みです。また、チップ同士を積み重ねて使う3D実装技術も盛り上がってきています。
これらの試みを実現するためには、複数に分かれたチップを精度よく、確実につなげてパッケージに収める技術が必須になります。ここでカギを握るのが半導体パッケージング技術であり、半導体の核となる技術だと考えています。
半導体パッケージング技術は、日本企業が世界をリードする分野
2つ目のポイントとして、半導体パッケージング技術が日本企業が強みを持っている分野の一つであることが挙げられます。US-JOINTに参加する日本企業の中でも、レゾナックHDは半導体チップを精密にくっつけるためのダイアタッチフィルムで世界No.1のシェアを持っています。また、TOWAについても、パッケージ内に収めた半導体チップを樹脂で覆うためのモールディング装置で世界トップのシェアを得ています。
このように、半導体パッケージング技術は、日本が世界をリードする分野であり、その点から見ても日本酒度で設立が決まった今回のUS-JOINTは重要だと考えます。
半導体分野での日米の関係性強化につながると期待できる
3つ目のポイントとして、US-JOINTを通じて日米の半導体関連企業の関係性強化につながるからです。アメリカと言えば、NVIDIA・INTEL・AMDといった半導体チップメーカや、GAFAMといった巨大IT企業があります。そのアメリカとの関係性を強化しておくことは、日本の半導体関連企業にとってプラスに働くはずです。
US-JOINTに参加する日本企業の紹介
US-JOINTに参加する日本企業5社についてそれぞれ紹介していきます。
レゾナックHD(4004)
株式会社レゾナックHDは、日本の大手総合化学メーカーです。2023年に昭和電工・昭和電工マテリアルズが合併して、現社名に変わりました。主に以下4つのセグメントの事業を行っています。
- 半導体・電子材料セグメント
- モビリティセグメント
- ケミカルセグメント
- イノベーション材料セグメント
半導体・電子材料セグメント
半導体製造工程で使用される高純度のガスや、高熱伝導率・絶縁性などさまざまな特性を持った特殊フィルム製品・基板材料のセグメントです。特に、半導体チップを基板上に固定するために使われるダイアタッチフィルムでは世界シェアNo.1、放熱用のシートでは世界シェアNo.2と優れた製品を持っています。
モビリティセグメント
自動車用の素材・部品のセグメントです。ブレーキパッドやエンジン回りの樹脂成型品を製造販売しています。
ケミカルセグメント
産業用のガスや塩化ビニルなどの石油化学製品の製造販売を行っているセグメントです。
イノベーション材料セグメント
化粧品材料や特殊な機能性を持たせた樹脂材料を扱うセグメントです。
東京応化工業(4186)
東京応化工業は、半導体製造工程で使用するフォトレジストと呼ばれる薬品で世界シェアNo.1の製品を持っている化学メーカです。このフォトレジストは、半導体チップに刻まれる微細な配線を形成する現像工程で使われています。
チップを作るための材料(シリコンウエハ)にフォトレジストを塗布し、配線を形成したいところに光を当てて、現像液という薬品で溶かします。その後フォトレジストが塗布されていないところだけ、上記のメック株式会社などが提供しているエッチング液で金属を溶かして配線を形成します。
以下の図に示すピンク色の部分がフォトレジストです。
出典:半導体のフォトリソグラフィとは?工程フローと原理|Semiジャーナル
メック(4971)
メック株式会社は、金属表面処理用の薬品を扱う化学メーカーです。金属表面をざらざらにして接着効果を高めたる薬品や、決まった金属だけ溶かせる薬品などを製造販売しています。特に、半導体分野では、銅の上面に微細な凸凹を作るように溶かすことで、樹脂との接着性を上げる銅表面処理液で世界シェアNo.1を誇っています。
TOWA(6315)
TOWAは、精密金型やモールディング装置に強みを持つ機械メーカーです。半導体製造分野においては、半導体チップを外部からの衝撃や湿気、微細なごみから守るために樹脂で封止するモールディング装置で世界シェア約70%を握るNo.1の地位を築いています。
アルバック(6728)
株式会社アルバックは、真空装置に特化したメーカーです。半導体製造工程では、半導体にごみが付かないように加工を行うために、真空装置の出番は多いです。特に、半導体の材料となるシリコンウエハの表面に極薄の膜を張るスパッタリング装置に強みを持っており、液晶用においては世界シェアNo.1の実力を持っています。
イメージとしては以下の図のようになっており、下側のターゲットに高速で不活性ガスをぶつけて成膜したい材料をたたき出すことで、上側のウェーハの表面に膜を形成します。
引用元:【半導体】成膜工程とは?|Semi ジャーナル
ナミックス
ナミックス株式会社は、電気を通す導電材料・逆に電気を通さない絶縁材料のどちらにも強い化学メーカーです。株式を上場していない企業です。半導体製造分野では、半導体チップを外部からの衝撃や微細なごみの付着から守るための絶縁性の液状封止材で世界No.1のシェアを持っています。
二つ上で紹介したTOWA株式会社のモールディング装置で使用する樹脂の封止材を供給しているイメージです。
まとめ:US-JOINTの今後の動向に注目!
今回の記事では、先週発表された注目ニュースとして日米の半導体企業10社が手を組んだ「US-JOINT」の設立について特集しました。US-JOINTは半導体パッケージング技術について研究開発を加速させる目的で設立され、2025年稼働開始を予定しています。
半導体パッケージング技術については、日本が世界をリードする立ち位置にあるため、日米の協力関係が強固になり日本企業にとってプラスに働くのではないかと思い注目しています。
日本からはレゾナックHDや東京応化工業、TOWAなどの半導体製造工程において世界No.1のシェアの製品を持つ企業が参加しており、これらの企業の今後の株価動向にも注目していきたいと考えています。
半導体関連銘柄については、過去に以下の記事でもまとめていますので興味があればチェックしてみてください。