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有望な投資先について分析して、投資を有利に進めたい!
投資を始めてから、ファンダメンタルズ分析といった言葉を聞いたことはありませんか? これは、投資対象を見極めるために必要な分析手法のことです。今回の記事では株式投資歴4年の私が、これらの分析手法が何なのか、またどう投資に役立つのか解説します。
これらの分析手法を使いこなせるようになれば、皆さんの投資にきっと役立つはずです。ぜひ参考にしてください。
ファンダメンタルズ分析とは?
ファンダメンタルズ分析は、投資対象に投資する価値がどのくらいあるのかを把握する分析手法のことです。株式投資であれば、投資を検討している企業の業績を調べて、投資する価値があるか調べることを言います。FXであれば、各国で発表される経済指標やニュースを調べて、通貨レートの相場がどう動くか予測することを指します。
今回は、株式投資におけるファンダメンタルズ分析について解説していきます。
株式投資におけるファンダメンタルズ分析

株式投資におけるファンダメンタルズ分析は、どう役に立つのでしょうか。それは、企業が公表している企業業績をもとに、以下のような企業の投資価値が分かるということです。
この分析を生かせば、投資する前にその企業が投資するに値するのかを見極められます。次の項からは、ファンダメンタルズ分析で実際に使う主な指標についてそれぞれ解説していきます。
PER :株価収益率
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PER (Price Earnings Ratio:株価収益率)は、企業の株価が割安かどうかを知るために使われる指標の一つです。その会社に対する投資家の期待値の大きさを表す指標とも言えます。PERは下の式で計算されます。
\(PER=\dfrac{株価}{一株当たり利益}\)
この指標でわかるのは、今の企業の株価が企業の得ている利益に対して何倍の水準にいるのかです。PERが高い=株主からの期待が高く成長する期待が高い、逆にPERが低い=あまり成長を期待されていないとも言えます。日本企業の平均PERは13~15倍とされており、これより高ければ割高、低ければ割安として株価の割安度を測る基準となります。
PBR:株価純資産倍率
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PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)は、PERと同じく、企業の株価が割安かどうかを知るために使われる指標の一つです。PBRは下の式で計算されます。
\(PBR=\dfrac{株価}{一株当たり純資産}\)
この指標でわかるのは、今の企業の株価が企業の保有する資産に対して何倍の水準にいるのかです。PBRが1倍=企業が解散しても株主に投資額が全額戻ってくる水準ということです。PBRはこの1倍を基準として、これより高ければ割高、低ければ割安として株価の割安度を測る基準となります。
このPBRについて、実は2023年から話題となっています。それは東京証券取引所が日本企業の株価の低迷を受け、PBRが低い企業に改善策を出すよう要請を出したためです。これにより、日本企業の経営が改善される期待がかかり、PBRが1倍以下の企業の株価は軒並み上昇しました。
東京証券取引所は31日、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る上場企業などに、株価水準を引き上げるための具体策を開示・実行するよう要請した。取引所としては世界的にも異例の取り組みで、低迷する日本株をテコ入れする狙いだ。
引用元:日本経済新聞 「東証、低迷日本株に警鐘 PBR1倍割れで改善策要請」
ROE:自己資本利益率
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ROE(Return On Equity:自己資本利益率)は、企業の稼ぐ力の大きさを見るために使われる指標の一つです。ROEは下の式で計算できます。
\(ROE=\dfrac{当期純利益}{純資産}\)
ROEは、企業が持っている純資産を元手に、どれだけ多くの利益を生み出しているかを表す指標です。つまり、ROEが高いということは、持っている資産を効率的に使って利益につなげている企業だということです。一般的にROEが10%以上あれば稼ぐ力のある優良企業だといわれています。
ただし、ROEには弱点もあります。上の数式を見ると分かるように純利益を増やすとROEが上がりますが、純資産を減らしてもROEは上がります。なので、企業が意図的に純資産を減らせば、純利益が増えなくてもROEを高く見せることができてしまうのです。その点には注意しましょう。
ROA:総資産利益率
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ROA(Return On Assets:総資産利益率)は、ROEと同じく企業の稼ぐ力の大きさを見るために使われる指標の一つです。ROAは下の式で計算できます。
\(ROA=\dfrac{当期純利益}{総資産}\)
ROAは、企業が持っているすべての資産を元手に、どれだけ多くの利益を生み出しているかを表す指標です。ROAが高いほど、持っているすべての資産を使って、効率よく利益を生み出している企業だということです。ROEと違うのは、ROEは企業が返済する義務がない純資産のみを基準にしているのに対して、ROAは企業が返済する義務のある負債も含めた全部の資産を基準に計算しています。ROAは一般的に5%以上あれば、稼ぐ力のある優良企業だといわれています。
ただし、ROAにも弱点があります。ROEと同じく、純利益を計算する際の指標にしているので、企業の本業で稼いだ利益だけでなく、不動産投資や株式売却益などによる一時的な特別損益が入るため、本業で稼ぐ力が見えなくなってしまうという点があります。
ROIC:投下資本利益率
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ROIC(Return On Invested Capitals:投下資本利益率)は、ROE・ROAと同じく企業の稼ぐ力の大きさを見るための指標の一つです。ROICは下の式で計算できます。
\(ROA=\dfrac{税引後営業利益}{(有利子負債+純資産}\)
ROICは、企業が持っている純資産と有利子負債(企業が利子を付けて返す必要がある借金)を本業の利益である営業利益にどのくらい効率的につなげられているかを表しています。ROE・ROAとの違いとしては、以下のようになります。
- 本業の利益である営業利益を指標にしているので本業で稼ぐ力が分かる
- ビジネスを成長させるために借り入れた有利子負債を考慮しているので、より企業の実際に近い利益を生み出す力が分かる
- 本業の利益である営業利益を指標にしているので本業で稼ぐ力が分かる
- 従業員給料などの経営を回すために必要な事業負債を含んでいないので、ビジネスを成長させるための資本に絞って利益を生み出す力が分かる
つまり、ROICはROE・ROAの弱点を克服し本業で稼ぐ力の大きさにフォーカスして確認できる指標です。一般的に12~15%以上の水準であれば、稼ぐ力のある優良企業と言われています。
ただし、ROE・ROAと比べ計算に手間がかかるため、企業の決算資料に情報として載っていないことが多いのが欠点です。詳しくは、以下のページを参考にしてみてください。
配当利回り
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配当利回りは、その企業の株式を保有した際に受け取れる配当金の株価に対する割合です。配当利回りは下の式で計算できます。
\(配当利回り=\dfrac{1株当たり配当金}{株価}\)
配当利回りは、その企業の株式を保有した時にどのくらい定期収入を得られるかを見るための指標です。日本企業の一般的な配当利回りとしては、2%程度です。配当利回りが高いほど、同じ金額を投資した時にもらえる配当金は多くなります。
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では、配当利回りが高いほど良いということですね!
ところが、そう単純ではなく配当利回りが高い企業には見落としやすいデメリットがあります。以下の記事で解説をしていますので、興味があればぜひ参考にしてください。
配当性向

配当性向は、企業が得た利益の内どのくらい株主への配当金に振り分けてくれるかを見るための指標です。配当性向は下の式で計算できます。
\(配当性向=\dfrac{1株当たり配当金}{一株当たり当期純利益}\)
配当性向が高い企業ほど、得た利益の多くを株主への配当金に回してくれる株主重視の企業だといえます。一方で、企業の成長への投資をないがしろにしている可能性もあるので注意が必要です。日本企業の一般的な配当性向は30~40%です。
まとめ:早速分析してみよう
今回の記事では、株式投資におけるファンダメンタルズ分析について解説しました。おさらいすると、ファンダメンタルズ分析は、「投資対象に投資する価値がどのくらいあるのかを把握する分析手法」です。特に、株式投資においては、投資を検討している企業について、株価の水準、稼ぐ力の大きさ、配当金をどのくらい出してくれそうかを把握できます。
株式投資におけるファンダメンタルズ分析に使う主な指標としては、以下の7つを紹介しました。
- 株価水準を確認するための指標:PER・PBR
- 企業の稼ぐ力を確認するための指標:ROE・ROA・ROIC
- 配当金をどのくらい得られそうか知るための指標:配当利回り・配当性向
ぜひ今回の記事を参考に、皆さんが投資を検討している企業について調べてみてください。この分析を身に着ければ、皆さんがもっと投資を有利に進めることにきっと役立つはずです。